あなた人間?わたし人間![第4話]

アイキャッチ[あなた人間?わたし人間!]

【公開処刑のマニフェスト】理不尽の連鎖、砕かれた自尊心

「終わった……」

先方からの完了連絡。その瞬間、事務所の空気は一変した。 一ヶ月前に入社したばかりの仲間、三ヶ月前の先輩。私を含め、この過酷なデスマーチを戦い抜いたのは、皮肉にも右も左もわからぬ「新人」ばかりだった。 私たちは手を取り合い、ボロボロになりながらも初めての「完遂」を分かち合った。この数日間の地獄も、この瞬間のためにあったのだと思いたかった。

だが、背後から近づいてきた上司の足音が、その喜びを凍り付かせた。

「お前ら、仕様変更になることくらい、なぜ予想しておかなかったんだ?」

耳を疑った。新人の私たちが、クライアントの気まぐれな仕様変更を予見しろというのか。 「おかげで納期が遅れたじゃないか」 彼の言葉は、もはや論理の体を成していなかった。さらに、追撃が続く。

「第一、納品日に家に帰るってどういうことだ? 誰が帰っていいと言ったんだ!」

喉まで出かかった。「あなたが『始発で帰って休め』と言ったじゃないか」と。 だが、眼前の男の瞳には、話の通じる「人間」の光は宿っていなかった。彼は、自分が放った言葉を平然と裏返し、それを私たちの「罪」として塗り替えていく。 これが、いわゆるガスライティング(心理的虐待)だと気づくには、私はまだ若すぎた。

「……すみませんでした」

絞り出した謝罪。だが、怪物は許さない。

「声が小さい! お前らのせいで遅れたんだ! 全員の連帯責任だ、みんなの前で謝れ!」

シーンと静まり返ったオフィス。他のプロジェクトの先輩たちが見守る中、私たちは並ばされ、腹の底から叫ばされた。 「すみませんでした!!」

その瞬間、私の中で何かが死んだ。 誇りや、やる気や、未来への希望。そんなキラキラしたものは、この怒鳴り声と共に粉々に砕け散った。 私たちはもう、対等な社員ではない。 機嫌一つでどうにでもなる、名もなき「駒」。 言葉を奪われた「奴隷」。 この日、私の心には深い深い絶望の杭が打ち込まれた。

あなた人間?わたし人間![第5話]
【ロジックの不在】「気合」と「根性」の強制毎日が「デスマーチ」。 誰が言い出したか知らないが、地獄への行進曲が鳴り止まない日々。 いくつかのプロジェクトを渡り歩く中で、私はある不合理な事実に気づいた。どの現場でも、似たような処理を一から、何...
原案:翠香
構成:高井優希
編集:Mini=G

コメント

タイトルとURLをコピーしました