【公開処刑のマニフェスト】理不尽の連鎖、砕かれた自尊心
「終わった……」
先方からの完了連絡。その瞬間、事務所の空気は一変した。 一ヶ月前に入社したばかりの仲間、三ヶ月前の先輩。私を含め、この過酷なデスマーチを戦い抜いたのは、皮肉にも右も左もわからぬ「新人」ばかりだった。 私たちは手を取り合い、ボロボロになりながらも初めての「完遂」を分かち合った。この数日間の地獄も、この瞬間のためにあったのだと思いたかった。
だが、背後から近づいてきた上司の足音が、その喜びを凍り付かせた。
「お前ら、仕様変更になることくらい、なぜ予想しておかなかったんだ?」
耳を疑った。新人の私たちが、クライアントの気まぐれな仕様変更を予見しろというのか。 「おかげで納期が遅れたじゃないか」 彼の言葉は、もはや論理の体を成していなかった。さらに、追撃が続く。
「第一、納品日に家に帰るってどういうことだ? 誰が帰っていいと言ったんだ!」
喉まで出かかった。「あなたが『始発で帰って休め』と言ったじゃないか」と。 だが、眼前の男の瞳には、話の通じる「人間」の光は宿っていなかった。彼は、自分が放った言葉を平然と裏返し、それを私たちの「罪」として塗り替えていく。 これが、いわゆるガスライティング(心理的虐待)だと気づくには、私はまだ若すぎた。
「……すみませんでした」
絞り出した謝罪。だが、怪物は許さない。
「声が小さい! お前らのせいで遅れたんだ! 全員の連帯責任だ、みんなの前で謝れ!」
シーンと静まり返ったオフィス。他のプロジェクトの先輩たちが見守る中、私たちは並ばされ、腹の底から叫ばされた。 「すみませんでした!!」
その瞬間、私の中で何かが死んだ。 誇りや、やる気や、未来への希望。そんなキラキラしたものは、この怒鳴り声と共に粉々に砕け散った。 私たちはもう、対等な社員ではない。 機嫌一つでどうにでもなる、名もなき「駒」。 言葉を奪われた「奴隷」。 この日、私の心には深い深い絶望の杭が打ち込まれた。

構成:高井優希
編集:Mini=G


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