【ロジックの不在】「気合」と「根性」の強制
毎日が「デスマーチ」。 誰が言い出したか知らないが、地獄への行進曲が鳴り止まない日々。 いくつかのプロジェクトを渡り歩く中で、私はある不合理な事実に気づいた。どの現場でも、似たような処理を一から、何度も、泥臭く書き直しているのだ。
「これ、共通化すればいいんじゃないかな?」
ある夜、新人だけで集まった時に私は提案した。 よく使う処理を「共通関数」としてまとめ、それを呼び出す形にすれば、コーディングの時間は減り、バグも激減する。今思えば、それはプログラミングの基礎中の基礎だった。だが、当時の私たちは、そんな当たり前の効率化すら許されない戦場にいた。
「それ、すごくいい案ですよ!」
仲間たちの目が輝いた。少しでもこのデスマーチを短くできる。人間らしい生活を取り戻せるかもしれない。私たちは希望を胸に、その案を上司の元へ持っていった。
だが、返ってきたのは、私たちの魂を凍らせる一言だった。
「は? そんなものいらん」
上司は鼻で笑った。
「お前らな、楽をしようとか考えてるんじゃねーよ。気合と根性があれば、何とでもなるんだよ。ヒヨッ子が考えるような甘っちょろい案なんか、ゴミにすらならねーよ」
……ゴミ。 論理的な効率化を「甘え」と切り捨て、精神論で物理的な作業時間を埋めようとする。 エンジニアとしての知性を否定され、ただの「肉体労働者」であることを強要された瞬間だった。
そして、その日を境に、嫌がらせのような「当てつけ」が始まった。 「気合が足りないからミスが出るんだ」「根性を見せろ」 そう言いながら、彼は私たちのデスクに、到底終わるはずのないボリュームの仕様書を積み上げていった。
「考えるな、ただ手を動かせ。寝る間を惜しんで書くのがエンジニアだ」
彼の掲げる「正義」の前では、プログラミング言語も、効率的なアルゴリズムも、すべてが無力だった。
構成:高井優希
編集:Mini=G


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