あなた人間?わたし人間![第10話]

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【生存本能の覚醒】味覚の反乱と、人間への回帰

とある深夜、終電の静寂が耳に痛い帰り道をトボトボと歩く。

久しぶりに帰れたアパート。空腹を満たすために手に取ったのは、買い置きのカップラーメンだった。お湯を沸かし、三分待つ。かつては楽しみだったはずのその香りが、今はただの義務的な儀式に思える。

三分経ち、蓋を開ける。美味しそうな良い匂いが立ち上る。

「いただきます」

小さな声でそう言うと、勢いよく麺を啜った。しかし、その瞬間、私は硬直した。

「……塩辛い」

旨味も、コクも、小麦の香りもない。ただ、舌を刺すような鋭利な「塩の味」だけが口の中に広がった。まるで、熱湯に大量の塩を溶かして飲んでいるような、不快な感覚。

脳裏を過ったのは、あの新人3人で食べた5,000円の焼肉。あの時も「塩辛い」味だけだった。また、味が「歪んで」いる。

ふと、最近の自分の体調を考えた。

慢性的な睡眠不足。コンビニ弁当とコーヒーだけで回している内臓。そして、数週間前から止まらない下痢。私の身体は、とっくに限界を超え、瓦解を始めていたのだ。

「私は、人間だ」

その言葉が、熱い塊となって喉元までせり上がってきた。

私は、社長の「同情を引くための小道具」ではない。上司の「ストレスをぶつけるためのサンドバッグ」でもない。24時間稼働し、塩の味しか感じられないまで使い潰される「マシン」であってはならないのだ。

その瞬間、霞んでいた視界が急激に鮮明になった。

事務所の空気、キーボードの打鍵音、社長の嘘臭い笑顔……それらすべてが、自分という人間を侵食する「毒」に見えた。

「何とかしなくちゃ。このままじゃ、本当に死ぬ」

心の奥底で、小さく、けれど決して消えない反逆の火が灯った。それは、地獄の底でようやく取り戻した、自分自身の「尊厳」という名の鼓動だった。

原案:翠香
構成:高井優希
編集:Mini=G

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