あなた人間?わたし人間![第8話]

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【消える同僚たち】崩れ去る日常、一人残された戦場

その日は、不自然なほどの静寂から始まった。 いつも誰よりも早くデスクにつき、キーボードの音を響かせていた新人の一人が、姿を見せなかった。 最初は「寝坊か?」と苛立ちを見せていた上司たちも、連絡が取れず、時間が経過するにつれ、不穏な空気に包まれていった。

しばらくして、一本の電話が、その沈黙を切り裂いた。

「大変です! 彼は駅のエスカレーターで意識を失い、転落したそうです。重体だそうで、今、病院で治療を受けているようです……!」

経理の女性の悲鳴に近い報告に、オフィス全体が凍りついた。 彼はいつものように出勤しようとしていた。だが、極限まで衰弱した身体は、駅のエスカレーターという日常の風景の中で限界を迎えたのだ。頭部に大きな怪我を負い、命の危険すらあるという。

……数日後、最悪なのは、彼の容態を聞いた上司の第一声だった。

「根性のない奴め。こんな程度で衰弱しているようじゃ、うちにはいらねーよ」

耳を疑った。生死の境を彷徨っている部下に対して、彼が抱いたのは「心配」ではなく、使い物にならなくなった道具への「不満」だった。

その言葉を聞いた瞬間、私の中で「カチリ」と、何かのスイッチが切り替わった。 (ここにいたら、殺される。命がいくつあっても足りない)

同じ思いだったのだろう。翌日、もう一人の新人仲間が退職願を手に現れた。

「悪いね。僕はもう無理だ」

上司は彼の目の前で退職願を破り捨て、罵倒を浴びせたという。だが、彼は冷静だった。あらかじめ用意していた予備の退職願を、社長に直談判して叩きつけ、そのまま嵐のように去っていった。

気づけば、あの地獄を共に歩んできた三人のうち、残されたのは私一人になってしまった。 昨日まで肩を並べていた仲間のデスクが、今はただ、冷たく無機質な光を反射しているだけだった。

あなた人間?わたし人間![第9話]
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原案:翠香
構成:高井優希
編集:Mini=G

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