あなた人間?わたし人間![第2話]

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【最初の違和感】「寝ないのが正義」人間を辞めたボスの第一声

慣れないスーツに身を包み、満員電車に揺られて辿り着いた初出勤。 「今日からお世話になります!」 笑顔で迎えてくれた7人の先輩たち。その雰囲気は、一見すればアットホームなものに思えた。だが、用意された自分の席を見て、私は足を止めた。 そこには、何もなかった。PCも、キーボードも、マウスすらも。

呆然とする私に、上司となる男が近づいてくる。 「PC、自作経験あるんだよね? あそこにパーツが転がってるから、自分のマシンは自分で組んでおいて」

男が指さした先には、マザーボードやHDD、メモリ、ケースといったパーツが、ゴミの山のように乱雑に積まれていた。仕事道具を「発掘」し「構築」するところから始まる初日。私は良さそうなパーツを選別し、OSをインストールし、どうにか自分の「武器」を作り上げるだけで一日を終えた。

だが、本当の地獄は2日目から始まった。

「このプロジェクト、もう納期がヤバいんだ。まずはテストツールを作ってくれ」

渡されたのは、まだ習得しきれていないC言語の仕様書。炎上しているプロジェクトの消火活動に、右も左も分からぬ新人が投入されたのだ。必死にコードを書き、先輩たちのプログラムのバグを洗い出す。 気づけば時計の針は夜の12時を回り、2日目にして終電。 そして3日目。私はついぞ、事務所の明かりが消えるのを見ることはなかった。

徹夜明けの4日目の朝。 コーヒーでどうにか意識を繋ぎ止めていた私の元へ、あの男がふらりと現れた。 顔色一つ変えず、彼はこう言い放った。

「どうだい、社会人1年生。この業界はね、寝ないのが正義だよ。なに、すぐ慣れるって」

……正義。 睡魔で霞む頭の中で、その言葉だけが異様に重く響いた。 人間が生きるために必要な睡眠を切り捨てる。それがこの世界の「正義」なのか? 私は震える手でコーヒーを啜りながら、確信していた。 自分は、とんでもない怪物たちの巣窟に足を踏み入れてしまったのだと。

原案:翠香
構成:高井優希
編集:Mini=G

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