あなた人間?わたし人間![第1話]

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【地獄への招待状】氷河期の果て、差し伸べられた手

2000年代初頭。世の中は「就職氷河期」という、若者にとっての厳冬期にあった。 100社にエントリーシートを送り、祈るような気持ちでポストを覗いても、届くのは無機質な不採用通知ばかり。運良く面接に辿り着いても、そこには「お前のような人間を誰が雇うんだ」と言わんばかりの圧迫面接が待っていた。

大学を卒業しても居場所はなく、各地の就職フェアを渡り歩く日々。 新宿で開催されたフェアは、まさに戦場だった。某テーマパークの入場待ちを彷彿とさせる人混み。熱気と、そしてそれ以上に漂う「焦燥感」に当てられ、私は半分諦めかけていた。

「ちょっと話を聞いて行かない?」

その声に振り向いたのが、すべての始まりだった。 差し出されたパンフレットには、大手電子機器メーカーのグループ会社の文字。 「組み込み系やオープン系の開発をしている会社なんだ」 その説明に、私は一筋の光を見た。大手の子会社なら安心だ。技術も身につく。何より、ようやく自分を「必要」としてくれる場所が見つかったのかもしれない。

事態は、目まぐるしい速さで動き出した。 一週間後の面接。課されたのは、簡単な質疑応答と「5年後の自分」というテーマの作文。 私は必死に書いた。一人前のエンジニアになり、会社に貢献し、輝いているであろう自分の姿を。

さらに一週間後。届いたのは「内定」の二文字。 「ウィークリーマンションを一ヶ月分用意するから、すぐに来てほしい」 あまりの急展開に戸惑う暇もなかった。家族も「よかったね」と手放しで喜んでくれた。

私は、合格通知を握りしめ、高鳴る胸を抑えて東京へと向かった。 これから始まるのが、エンジニアとしての輝かしいキャリアだと信じて。 その「内定通知」が、実は巧妙にカモフラージュされた「人間廃業宣言」への招待状であることに、まだ気づく由もなかった。

原案:翠香
構成:高井優希
編集:Mini=G

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