【不摂生の証明書】自ら招いた「一ヶ月の休息」
彼のあまりの顔色の悪さと、仕事中の放心状態を見かねて、私は社長に相談した。すると社長は「あそこまで仕事に身が入らないのは、どこか体が悪いんじゃないか。一度、病院で精密検査を受けさせてみては?」と提案してくださった。
社長の温情を受け、私は彼に近隣の総合病院を勧めた。 「今の君の状態は、明らかに異常だ。一度しっかり診てもらって、原因をはっきりさせよう」
数日後、彼から電話が入った。その声は、重病を宣告された者のそれではなく、まるで宝くじに当選したかのように、どこか弾んでいた。
「……受診しました。結果、重度の栄養失調と生活習慣の乱れによる極度の衰弱ということで、一ヶ月の療養が必要だと診断されました。なので、今日から一ヶ月休みます」
話を聞けば、夜な夜なゲームに没頭し、食事もまともに摂らず、スナック菓子とエナジードリンクだけで過ごしていたという。プログラマーとしての自己管理は愚か、生命維持の管理すら放棄していた結果だった。
「休むのであれば診断書が必要だ」と伝えると、彼は「二週間後の再診で出します」と答え、その日から堂々と「公認の休み」に入った。
二週間後、郵送されてきた診断書を見て、私はまたしても眩暈を覚えた。 彼が電話で「今日から休みます」と宣言した日付と、診断書に記載された療養開始日の間には、一週間のズレがあったのだ。つまり、最初の一週間は医師の指示でも何でもなく、彼が勝手に「病人のフリ」をして前倒しで休んでいた「ただの欠勤」だった。
しかし、最も衝撃的だったのは、社内のホワイトボードに「一ヶ月休職」と書き込んだ後の反応だ。
「え? 彼、休職してたの? いつも通りサボってるだけだと思ってた」
「一ヶ月もいないことに、今の今まで気づかなかったよ」
社員の6割以上が、彼が正式に休んでいることすら知らなかった。 かつて10年この会社にいたはずの男の不在は、誰の仕事にも影響を与えず、誰の心にも波風を立てなかった。
「自堕落な生活で栄養失調になって、会社を休む? 挙句に一週間サバを読んで休むなんて、最後まで甘えてますね」
休憩所から聞こえてくる冷ややかな失笑。 彼が手に入れた「一ヶ月の自由」は、引き換えに、彼が社会人として保っていた最後の「居場所」を完全に消し去ってしまった。
構成:高井優希
編集:Mini=G


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