ガントチャートが見せた「地獄の着手日」
社長の雷が落ち、職場全体に不信感が充満した日から数日後、私はついに「タスクの可視化」に踏み切った。 導入したのはガントチャート。 どの作業に何日間かけ、今どこまで進んでいるのか。それを一本の線で繋ぎ、彼が「言い逃れ」できない環境を整えた…はずだった。
だが、そこに映し出されたのは、私の想像を絶する「空白の数日間」だった。
普通、7日間の猶予があるタスクを振られたら、プロなら……いや、社会人なら初日にこう考えるはずだ。 「作業の全貌を確認し、1日でも早く着手し進めよう」 あるいは、「後半にトラブルが起きてもいいように、前倒しで終わらせよう」と。
しかし、ガントチャートに映った彼の真実は、こうだった。
【1日目:未着手】
【2日目:未着手】
【3日目:未着手】
【4日目:未着手】
【5日目:未着手】
【6日目:夕方に内容確認】
【7日目:作業したが間に合わず未完成】
なぜ?なぜ、6日目まで着手すらしない? 5日間、君は何を「観測」していたんだ?
問い詰める私に、彼はまるで「雨が降ったから傘をさしました」くらいの自然なトーンでこう答える。 「他の作業に集中していたので、着手できませんでした」
だが、彼のガントチャートに全てのタスクを並べてみれば、その「他の作業」とやらも、同じように最終日あたりまで放置されているのだ。 つまり、彼は「すべての作業を、最終日の崖っぷちまで一斉に並走させ、一気にすべてを突き落としている」のである。
夏休みの宿題を最終日にやる小学生ならまだ可愛げがある。 だが、彼は給料をもらっているプロだ。 作業開始日に「全貌を確認する」という、仕事における最小単位のルーチンすら、彼の脳内辞書には存在しなかった。
私の頭の中には、またあの3文字がこだまする。
「なぜ?」
可視化すれば解決すると思っていた私は甘かった。 ガントチャートは、問題を解決するための道具ではなく、「彼がいかに何もしていないか」を鮮明に描き出す、残酷な観測記録に過ぎなかったのだ。
構成:高井優希
編集:Mini=G


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