介護マネジメント─「赤ペン先生」になった私と、開かれない教科書
「スケジュールが立てられないなら、私が立ててあげよう。いつか、私のやり方を盗んで自立してくれる日まで」
そんな私の甘い期待は、今思えば砂上の楼閣だった。 ガントチャートは「見づらい」、カンバンは「一画面に収まらない」。次々とツールのせいにする彼に対し、私はついに究極の譲歩をした。
「君専用の、毎日の時間割を作ってあげるよ」
毎朝、定時前。誰もいないオフィスで、私は彼のタスクをタスク管理ツールに整理し続けた。 「優先順位が高い順に並べる」「終わったらチェックを入れられる」「絶対に落とせないものは、燃えるような赤い太字にする」 彼の要望をすべて叶えた、世界に一つだけの、手厚すぎる「ToDoリスト」。
正直、心の中では叫んでいた。 「なぜ私がここまでやらないといけないんだ? 普通の社会人は、これを自分でするのが『仕事』だろう?」
だが、私は耐えた。これは自分の管理不足を埋めるための投資だ。背中を見せれば、きっと彼は学んでくれるはずだ……。
しかし、現実は非情だった。
夕方、進捗を確認すると、赤い太字のタスクは手付かずのまま放置されている。 「……どうして優先順位通りにやらなかったの?」 絞り出すような私の問いに、彼はさも「当たり前のこと」を報告するかのような涼しいトーンでこう言った。
「あ、そのリスト、見るのを忘れていたので。いつも通りにやってました」
崩れ落ちそうになった。 私が毎朝、早めに出社して作成した「地図」を、彼は一度も開くことなく、自分の欲望のままに「迷子」を楽しんでいたのだ。 挙句の果てには、「確認するのが面倒なんです」という、作成者への死刑宣告。
この時、私はようやく理解した。 彼はスケジュールの立て方が「わからない」のではない。 「誰かがお膳立てしてくれる状況」に甘え、それを消費し、自分が責任を負わなくて済む安全地帯を確保しているだけなのだと。
私の「善意」は、彼の「怠慢」を育てる最高の肥料になってしまっていた。
構成:高井優希
編集:Mini=G


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